イントロ

マジックミラー越しの彼女たちの青春

永井荷風が1931年に発表した同名小説を原案とし、舞台をコロナ禍の渋谷に置き換え、パパ活をすることになった女性の青春と友情を描く。
小説は昭和初期の銀座のカフェーを舞台に、自由奔放だが逞しく生きる女給の主人公と彼女と関係を持つことになる軽薄な男たちを描き、大文豪・谷崎潤一郎に「文学史上に我が昭和時代の東京を記念すべき世相史、風俗史とでも云ふべき作品」と激賞された名作であり、「昭和初期の銀座の風俗史」ともいえる作品だ。
映画は、小説の持つ普遍性を踏襲しながら、時代をコロナ禍の渋谷に置き換えパパ活で自分たちのことを体目当てにしか考えていない男たちを相手に、奔放さと逞しさを持って生き抜こうとする女性たちの生き様を描いていく。

ストーリー

出会い喫茶で出会ったふたりに生まれる 不思議な友情

キャバクラで働いていた琴音(20)は、コロナ禍で店が休業、一緒に住んでいた男に家財を持ち逃げされ、家賃を払えなくなり、行き場を失ってしまう。そんな中、知り合った楓(21)の紹介で出会い系喫茶に出入りする様になり、男性客とパパ活をすることで日々を切り抜ける生活をしている。
おかしな客に絡まれたりネット上で中傷をされたりしながらも、あっけらかんと逞しく生きている琴音は、あることがきっかけで、同じ出会い系喫茶でパパ活をする大学生のさくら(20)と出会う。
性格も育ちも自分とは正反対。生まじめで何事も重く受け止めてしまうさくらと琴音は不思議とウマが合い、友情を深めていくのだった。
体目当ての矢田(42)、出版社の社長でパトロンでもある清岡(36)、容姿端麗なダンサーの木村(28)ら軽薄な男たちと、生活のため、ホスト狂いのため、学費のため、各々の理由でパパ活をする女性達の対比で物語は進んでいく。

キャスト

高橋ユキノ

琴音役

高橋ユキノ

Yukino Takahashi

西野凪沙

さくら役

西野凪沙

Nagisa Nishino

吉田伶香

楓役

吉田伶香

Ryoka Yoshida

渋江譲二

清岡役

渋江譲二

Jouji Shibue

守屋文雄

矢田役

守屋文雄

Fumio Moriya

松㟢翔平

木村役

松㟢翔平

Shohei Matsuzaki

テイ龍進

野口役

テイ龍進

Tei Ryushin

前野朋哉

川島役

前野朋哉

Tomoya Maeno

スタッフ

監督:山嵜晋平

1980年生まれ、奈良県出身。日本映画学校在学時に卒業制作「魚の味」監督。卒業後、(有)楽映舎にて制作部としてキャリアをスタート。『十三人の刺客』『一命』『藁の楯』『土竜の唄』など三池崇史監督のもとで鍛えられる。その他、『東京オアシス』『ヘヴンズ ストーリー』『アントキノイノチ』『繕い裁つ人』など多くの監督、プロダクション作品で活躍後、2015年からBSジャパンにてドラマを監督する。 長編映画初監督作である『ヴァンパイアナイト (映画)』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」正式出品。19年『テイクオーバーゾーン』が「第32回東京国際映画祭(2019年)」日本映画スプラッシュ部門に出品され主役の吉名莉瑠がジェムストーン賞を受賞。『DIVOC-12「YEN」』(21年公開・ソニー・ピクチャーズ)、『なん・なんだ』(2022年公開・太秦)等がある。 プロデュース作品『一月の声に歓びを刻め』(三島有紀子監督・東京テアトル)が24年2月公開。

脚本:中野太

1968年生まれ、新潟県出身。シナリオ作家協会シナリオ講座修了後、荒井晴彦に師事。98年、ピンク映画『黒と黒』(98/新里猛作監督)で脚本家デビュー。主な作品に『魔法少女を忘れない』(11/堀禎一監督)、『戦争と一人の女』(13/井上淳一監督)(荒井晴彦と共同脚本)、『さよなら歌舞伎町』(15/廣木隆一監督)(荒井晴彦と共同脚本)、『夢の女 ユメノヒト』(16/坂本礼監督)、『ろんぐ・ぐっどばい 探偵古井栗之助』(17/いまおかしんじ監督)、『なん・なんだ』(22/山嵜晋平監督)、『花腐し』(23/荒井晴彦※荒井晴彦と共同脚本)などがある。

共同脚本 : 鈴木理恵 山嵜晋平

撮影:山村卓也

1987年生まれ、兵庫県出身。
栢野直樹、芦澤明子らに師事したのち独立。
主な作品に映画『テイクオーバーゾーン』(19)、『DIVOC-12』(21/山嵜晋平/斉藤栄美/加藤拓人監督)、『なん・なんだ』(22/山嵜晋平監督)、『インペリアル大阪堂島出入橋』(22/三島有紀子監督)、「一月の声に歓びを刻め」(‘24/三島有紀子監督」などがある。
WOWOW「0.5の男」(監督・沖田修一/玉澤恭平)、ABCテレビ「ミス・ターゲット」などのテレビドラマも手掛けている。

照明:津覇実人

1980年、沖縄県出身。
ローカルテレビ局の報道カメラアシストからキャリアをスタートし、その後AND OKINAWAに就職。
2009年に上京、渡邊孝一氏を師事し、渡邊氏の下で崔洋一監督、山田洋次監督、李相日監督、吉田大八監督、阪本順治監督、作品に参加後、照明技師として「ハナレグミ/深呼吸MV」(16/監督:是枝裕和)「ランブラーズ2」「最悪のデートが最高になったわけ」(21/監督:山下敦弘)「一月の声に歓びを刻め」(24/監督:三島有紀子)などがある。

音楽:田中拓人

1974年生まれ。札幌市出身。
大学卒業後、三枝成彰事務所にて音楽制作に参加。現在は映像音楽の作曲を中心に活動。
主な劇伴作品に、映画『オカンの嫁入り』(10)、『そこのみにて光輝く』(14)、『きみはいい子』(15)、『無伴奏』、『オーバー・フェンス』(16)、『幼な子われらに生まれ』(17)、『Red』(20)、『大コメ騒動』(21)、『東京組曲2020』(22)、『春に散る』、『私たちの声』(23)など。

原案:永井荷風「つゆのあとさき」

1899年東京高商付属学校清語科中退。
広津柳浪の門に入り『地獄の花』 (1902) などでゾライズムの紹介を試みた。
1903年にアメリカ,フランスに渡り 08年に帰国。『あめりか物語』 (08) で文名をあげ,09年『ふらんす物語』『深川の唄』『すみだ川』『冷笑』などを発表,独自の文明批評と耽美享楽の作風で反自然主義の代表作家として重きをなした。東京の形骸化した文明への嫌悪,大逆事件 (10~11) の衝撃などで江戸趣味を強め,花柳界を描いた『腕くらべ』 (16~17) ,『おかめ笹』 (18) などを発表。『つゆのあとさき』 (31) ,『濹東綺譚 (ぼくとうきたん) 』など風俗描写にも才筆を示した。
戦後,その間ひそかに書きためた『浮沈』『踊子』『勲章』『来訪者』や 17年以来の日記『断腸亭日乗』を発表。
1952年文化勲章受章。

1959年4月30日没

主題歌「つゆのあとさき」  挿入歌「琥珀の五月雨」
Lilubay

Lilubay

2019年11月、 ⻄村”コン”(きのこ帝国)を中心にシンガーソングライターのタグチハナ、 バンビ(可愛い連中、ex.アカシック)によって結成。個性のある3人が、不思議なほどまとまり、特定のジャンルに囚われない抜群のアンサンブルを生む。2024年6月22日公開映画「つゆのあとさき」に主題歌・挿入歌を書き下ろし。主題歌「つゆのあとさき」挿入歌「琥珀の五月雨」を6月5日配信リリース。バンドは6月15日(土)新宿MARZにて開催されるワンマンライブにて解散となる。

応援コメント

※順不同、敬称略

これ以上ないリアル。
売春の先のシスターフッド 。
マジックミラー越しに女を吟味し、金で身体を買い支配しようとする。
しかし彼女達はするりとその手から抜け落ちて渋谷の街を駆けて行く。

佐々木チワワ
(ライター)

コロナという病は、女たちと男たちの剥き出しの生を露出させ、自らの生存価値に対峙できるアリバイとなった。ウイルスが消えないうちに、キャンディがなくならないうちに、女たちはまるで刹那の生を謳歌するカゲロウのようだった。 

ヴィヴィアン佐藤
(ドラァグクイーン・美術家)

100年近く前の昭和初頭に銀座のカフェーを舞台に繰り広げられた女給たちの愛憎模様が、コロナ禍の渋谷でSNSや出会い系風俗店を使って「パパ活」に励む現代の娘たちの姿によって、みごとに甦った。してみれば、永井荷風が生きた時代と、われわれが暮らす今の日本の空気は意外なほど似通っているのだ。そのことに気づくとき、目の前の現実と過去とが繋がる歴史の符合に改めて驚かされる。これは、単なる風俗劇に止まらぬ重みを持った映画なのである。

寺脇研
(映画プロデューサー・映画評論家)

この映画の少女たちを逞しさなどという言葉で片付けてはならない。地獄味のロリポップは束の間の天国しかみせてくれないし、甘ったるいタピオカは胃の中で消化出来ない「絶望」だ。彼女たちにはとっくにこの世界の正体がバレている。今日もこの街で彼女たちとすれ違っている現実を私は決して忘れない。

斉藤陽一郎
(俳優)

女は母なる大地であり聖母マリアにも娼婦にもなりうると言ったのは誰だったか…彼女たちは己の傷の深さに気がついているだろうか。ただただ突き進む。それも青春というものであるならば、踏み出した道の先に一筋の光があることを切に願う。

山田キヌヲ
(俳優)

孤独の中でサバイバルする人びとの姿は熱くて人間くさい。
それはきっとこの作品が、山嵜監督が贈る、正解なき人生を生きる人びとへの賛歌であったからに違いない。

平松恵美子
(映画監督・脚本家)

琴音が"逞しく"生きる度に、私は小さく緊張する。
いつすれ違っていてもおかしくはない彼女たちに、私は今日も気付かず街を歩いている。
映画がラストに向かう中で、突きつけられる一枚の壁。
その存在があまりにも大きく見えて忘れられない。
カーテンで仕切られたその奥で、互いに知り得ることのない現実が渦巻いている。

 上村奈帆
(映画監督・脚本家)

貴方の隣りに必要なのは…居心地のいい人?見た目のいい人?話を聞いてくれる人?お金をくれる人?
コロナ禍が舞台ではあるが、今も、これからも、誰にでも起こり得る物語。
“生きるために私なら―”覚悟して観るべき傑作!

ウエダアツシ
(映画監督)

2000年代初めのロウイエ監督を彷彿させる快作。肌感溢れる人への想いと無機的な現代との調和が良い。ストーリーに沿って主演の高橋ユキノさんが魅力的に成長していくドキュメンタリーでもある様におもえる。スクリーンでダイナミックな映像をご堪能ください。 

芦澤明子
(撮影)

ガツンときた。力強い映画だ。
ドキュメンタリーみたいな生々しさと、凛とした透明感が混じり合った世界に、惹き込まれた。傑作!
琴音とさくらの生きる姿が、リアルで力強くて悲しくて、心をグイグイ掴まれた。名演!   

土屋哲彦
(映画監督/ディレクター)

誰にも等しく訪れたコロナ禍。あの時間を“過去”にできている人もいれば、 “過去” にできなかった人、今も乗り越えられずにいる人がいるのかもしれない。人生において交わることがないであろう他者に思いを馳せる、日常では得難い稀有な時間を得た。

ミヤザキタケル
(映画アドバイザー)

予告編